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トニーの話。
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    昨晩、僕は仕事が遅くなって、そのあと鯖缶でギネスを飲んでたんです。それで帰宅がわりと遅くなってしまったんです。

    まあもう今週で鯖缶も閉店なので、僕も出来る限り飲みに行こうと思っています。まあ常連客もみなよく来ているみたいです。思うところは同じなわけですね。皆名残惜しく候。ってことですね。

    鯖缶から帰宅時に家の玄関に近づく間に鞄からキーケースをだして、ふと玄関先の方をみたら、玄関の前に人影があるんですよ。

    うちの前は小さな電灯しかなくて、あまり明るくないし、僕も視力が良いわけではないので、遠くからだとよく見えなかったのだけど、近づいていくとどうやらその人影は玄関の前で座っているようなんです。

    僕は瞬時にあの読書家の幽霊の女の子かと思いました。また座って読書してるのかなって。うーん、さすがにうちにまで来られるのはちょっと困ると思ったりして。

    近くまで行って分かったのだけど、その人影は真っ黒なんです。

    よく見ると顔が大きくて、毛むくじゃらです。顔を俯いて、体育座りのような格好でうちの玄関の前に居る。

    僕が恐る恐る近付くと、その毛むくじゃらの黒い人影はむっくりと顔をあげました。

    『やぁ、おそかったじゃないか。ずっと待ってたんだよ、ひとみちゃん。』

    なんと、それはクマでした。

    クマが日本語を話してる。

    僕は目の前で起こってる出来事が理解できずに、某然とその喋るクマを見つめていました。

    『ああ、そういえば僕はひとみちゃんに会うのは今日が初めてなんだった。でも僕は前から君を知ってるんだよ。マルコさんとノベーラさんからずっと君のことを聞いていたし、何より元々君が僕を作ったんだからさ。』

    クマが言った。僕はもちろんクマの言っていることの意味がさっぱりわからない。

    『まぁ、とりあえずうちに入ろうよ。寒いしさぁ。』

    僕は何がなんだか分からないままクマを家にいれた。

    『うわっ、この家さっ寒いねぇ。早く暖房つけようよ。どうせまた鯖缶行ってたんでしょ。マルコさんからよく聞いてるよ。ひとみちゃんここ数年飲み過ぎだってね。』

    うちに入るなりクマはそう言った。ちょっと失礼なやつだ。クマのくせに。

    僕はキッチンの暖房を入れて、お湯を沸かしてテーブルについてるクマに緑茶を入れて出した。

    『ひとみちゃんさぁ、あのひとみちゃんの今年新しく作った名刺あるでしょ? あの裏に描いたクマね。あれが僕だよ。』

    『ん??』

    『神様があの絵を具現化して命をくれたんだ。ノベーラさんがこないだ運命の神様の所に嫁入りしたでしょ。運命の神様はさぁ、そういうことも出来るんだ。絵や写真や彫刻やそう言ったものに命を与えられちゃうわけ。』

    なるほど。たしかに、それならば納得できる。それにノベーラならばやりそうだ。これは彼女のユーモアなんだろう。

    『僕の名前は、アントニオっていうんだ。ノベーラさんが付けてくれたんだ。旦那には内緒だけど、実は初恋の相手の名前なんだって。周りのみんなからはトニーって呼ばれてるんだ。だからひとみちゃんもまあそう呼んでよ。』

    僕は頷く。なんと、ノベーラの初恋相手の名前なのか、僕の描いたクマなのに著作権は完全に無視されている。まあ、神様には逆らえないけれど。

    トニーはお茶を啜っている。

    トニーは、背の高さは大体1メートル30センチくらいで、小学生低学年くらいの大きさだ。毛の色は家の中でよく見ると濃いブルーグレーのような色をしてる。なかなか綺麗な色だ。目はつぶらでなかなかかわいらしい。

    声は声変わりする前の少年みたいな、高くて澄んだ声をしている。そういわれてみると、確かに僕の名刺の裏に印刷したクマとそっくりだった。

    昨晩はボノは実家に預けていたから良かったなってそのとき僕は思った。もしボノがいたら、こんな同種みたいな毛むくじゃらがいきなり来たら深夜なのに興奮してうるさくて仕方なかっただろうし。それに、近所から苦情も来ただろう。もしこんな喋るクマが近所の人に見られたらそれこそ大変だ。

    『あー、これジャムだねぇ』

    トニーがずっと恨めしそうな目で、戸棚にいれてあった僕が先日作った夏みかんのマーマレードジャムを見つめている。

    僕はジャムをクラッカーに乗せてだしてあげた。

    『美味しいなぁ、これひとみちゃんが作ったんでしょ。なかなかやるねぇ。』

    トニーはジャムクラッカーに夢中で食べている。クマがジャムクラッカーを食べながらお茶を啜る。僕もこの不思議な光景を見ながらお茶を啜る。

    『実は、今日来たのはさぁ、マルコさんからの伝言を伝えに来たんだよね。彼はいま師走の仕事納めで忙しいんだって。だから頼まれたんだ。』

    ジャムクラッカーを食べ終わったトニーは話し始めた。

    『ひとみちゃん時計買ったでしょ。マルコさんから言われたやつね。あれを来年からは出来る限り肌身離さず身に着けなさいって言ってたよ。』

    僕は頷く。今もぼくの左腕にその時計がある。

    『その時計は特別なんだ。他の時計にはない力をマルコさんが込めたからね。ひとみちゃんにとって常にプラスに働くんだって。前になってた時計アレルギーは完全に消えたでしょ?あれはその時計を着ける前のモラトリアムだったんだ。時々人には何かを迎える前にそういう期間が必要になる時があるんだ。ひとみちゃんはその時計と共にこれから写真を撮っていくんだって。 』

    以上!

    そういってトニーはにっこり笑う。彼は笑うととても可愛らしい。

    僕は頷く。

    『たしかに伝えたよ。じゃあ、僕は仕事が終わったから帰るよ。ノベーラさんが待ってるからね。ジャムごちそうさま。』

    トニーはそう言って帰って行ったのです。

    PEACE

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    | Mr.Marco | 10:43 | comments(0) | - | pookmark |
    神様の涙。
    0
      そうなんだ。

      実は久々に彼が来た。

      昨日の、正確に言うと今日の深夜3時くらいだったかな。

      横須賀は雨が降り始めていて、僕はとっくに眠っていた。

      それで例のファミリーマートと同じインターフォンの音で起こされた。久々で僕はまさかなって思って玄関へ向かうと、やっぱりスーツ姿で白髪の紳士が立っていた。

      彼にあったのは僕は、どれくらいぶりだろう。ブログを見返してみないと分からないな。覚えてないくらい久々だったから。

      彼は、「おはようございます。大変ご無沙汰しておりました。」と相変わらず丁寧に挨拶をした。

      ボノが夜中の三時だって言うのに例のインターフォンに反応して吠えてしまったから近所の人が起きるんじゃないかと僕は少し焦ったのだけど、佐伯マルコさんは相変わらずマイペースだった。彼は少し元気がなさそうだったし、以前に比べて少し痩せたようだった。

      「今日は少し飲みたい気分なんです。」そう言って、とても珍しい事なのだけど、彼は日本酒を土産に持ってきた。こんな事は初めてで、僕は少し驚いた。だっていつもは彼は紅茶しか飲まないから。僕はそもそも彼は酒を飲まないと思っていたし、飲んだとしても洋酒だろうと思っていた。たぶんウィスキーかワインなんかも似合うと漠然と想像した。だから日本酒を持ってきたのは意外だったんだ。

      彼の持ってきた日本酒のラベルには越乃寒梅と書いてあった。

      名酒だ。

      参ったな。夜中の三時なんだけどな。

      僕は支度を初めた。彼が飲みたい気分だって言ったのは、初めての事だったし何かあったんだろうと思った。彼はずっと下を向いたまま黙っている。

      僕はとりあえず、ネギを刻んで、鰹節を削ってを冷や奴を作った。冷凍の枝豆を流水で解凍して即席の肴を用意して、ぐい飲みを二つ用意した。それでダイニングキッチンの椅子に座った。寒かったのでガスファンヒーターつけた。

      「本当は魚でもあれば良かったのですが...」僕がそう言ったら彼は、「おかまいなく」と言った。

      ボノはいつも通りマルコさんの膝の上にぴょんと飛び乗ってすぐさま丸くなって眠り始めた。

      「実は...」

      彼はそのあとの言葉をなかなか言わなかった。僕はその間彼が話し始めるのをじっと待っていた。

      「ノベーラが結婚することになったんです。」

      ええ?!

      僕は驚いた。そもそも神様ってのは結婚するっていうことを知らなかった。それに少なからずノベーラが結婚する事に対してショックを受けた。まあ美人が嫁にいくって言うのは寂しいものだ。例えば芸能人のファンが、その芸能人が結婚する事を知ってショックを受けるのと同じ感覚だろうな。それに彼女はとても素敵だしね。

      「来月です。」

      なるほど、マルコさんが元気がないはずだ。1人娘が嫁ぐことになったのだから当然だよな。父親ってのはそう言うものだ。僕の妹が嫁にいった時には、うちの親父だってそうだったくらいだから、マルコさんの気持ちは良くわかった。

      「実は運命の一族の長男に嫁ぐことになったのです。」

      そうか、運命の一族といえば、神様の中で一番位の高い一族だ。人間の運命を司る一族。人間の運命の糸を結びつける仕事をしている神様たちだ。

      なるほど、運命の一族の長男ってことは、きっとそれは佐伯家にとってはとてもめでたい事だろうし、ノベーラにとっても良い事なんだろうな。

      でも、参ったな。なんて言えば良いのか、僕にはさっぱり分からなかった。とりあえずうなずいて、空っぽになったマルコさんのぐい飲みに越乃寒梅をついだ。

      それからiPodを持ってきてスピーカーに繋いでキャノンボールの枯葉を流した。とにかく寂しい時には僕は大抵これを聞く。寂しい時に無理矢理明るい曲を僕は絶対に聞かないんだ。心に逆らっても心は癒されないと僕は子供の頃から知っていたから。

      その直後、マルコさんが泣き出した。

      僕の目の前で嗚咽を漏らしはじめて、その後大声をあげて泣き出した。彼は子供のようだった。とても小さくて、とても弱そうに見えた。いつもの彼の威厳や自信みたいなものはどこかにいってしまったように見えた。

      ボノがビックリして起きた。顔を上げて泣きじゃくるマルコさんを心配そうな顔で見ている。ボノの背中にはマルコさんの涙が落ちてどんどん染みていく。

      僕は立ち上がって彼に近づき、彼を抱きしめた。かける言葉を探してみたけど、見つからなかった。僕にはそれしかできなかった。僕が抱きしめたら、彼はもっともっと小さくなってその後もずっとワンワン泣いていた。

      昨夜、僕は泣きじゃくる神様を抱きしめて、外は雨が降っていて、マイルスが枯れ葉のメロディを吹いていたんだ。


      | Mr.Marco | 15:26 | comments(0) | - | pookmark |
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