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神様の涙。
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    そうなんだ。

    実は久々に彼が来た。

    昨日の、正確に言うと今日の深夜3時くらいだったかな。

    横須賀は雨が降り始めていて、僕はとっくに眠っていた。

    それで例のファミリーマートと同じインターフォンの音で起こされた。久々で僕はまさかなって思って玄関へ向かうと、やっぱりスーツ姿で白髪の紳士が立っていた。

    彼にあったのは僕は、どれくらいぶりだろう。ブログを見返してみないと分からないな。覚えてないくらい久々だったから。

    彼は、「おはようございます。大変ご無沙汰しておりました。」と相変わらず丁寧に挨拶をした。

    ボノが夜中の三時だって言うのに例のインターフォンに反応して吠えてしまったから近所の人が起きるんじゃないかと僕は少し焦ったのだけど、佐伯マルコさんは相変わらずマイペースだった。彼は少し元気がなさそうだったし、以前に比べて少し痩せたようだった。

    「今日は少し飲みたい気分なんです。」そう言って、とても珍しい事なのだけど、彼は日本酒を土産に持ってきた。こんな事は初めてで、僕は少し驚いた。だっていつもは彼は紅茶しか飲まないから。僕はそもそも彼は酒を飲まないと思っていたし、飲んだとしても洋酒だろうと思っていた。たぶんウィスキーかワインなんかも似合うと漠然と想像した。だから日本酒を持ってきたのは意外だったんだ。

    彼の持ってきた日本酒のラベルには越乃寒梅と書いてあった。

    名酒だ。

    参ったな。夜中の三時なんだけどな。

    僕は支度を初めた。彼が飲みたい気分だって言ったのは、初めての事だったし何かあったんだろうと思った。彼はずっと下を向いたまま黙っている。

    僕はとりあえず、ネギを刻んで、鰹節を削ってを冷や奴を作った。冷凍の枝豆を流水で解凍して即席の肴を用意して、ぐい飲みを二つ用意した。それでダイニングキッチンの椅子に座った。寒かったのでガスファンヒーターつけた。

    「本当は魚でもあれば良かったのですが...」僕がそう言ったら彼は、「おかまいなく」と言った。

    ボノはいつも通りマルコさんの膝の上にぴょんと飛び乗ってすぐさま丸くなって眠り始めた。

    「実は...」

    彼はそのあとの言葉をなかなか言わなかった。僕はその間彼が話し始めるのをじっと待っていた。

    「ノベーラが結婚することになったんです。」

    ええ?!

    僕は驚いた。そもそも神様ってのは結婚するっていうことを知らなかった。それに少なからずノベーラが結婚する事に対してショックを受けた。まあ美人が嫁にいくって言うのは寂しいものだ。例えば芸能人のファンが、その芸能人が結婚する事を知ってショックを受けるのと同じ感覚だろうな。それに彼女はとても素敵だしね。

    「来月です。」

    なるほど、マルコさんが元気がないはずだ。1人娘が嫁ぐことになったのだから当然だよな。父親ってのはそう言うものだ。僕の妹が嫁にいった時には、うちの親父だってそうだったくらいだから、マルコさんの気持ちは良くわかった。

    「実は運命の一族の長男に嫁ぐことになったのです。」

    そうか、運命の一族といえば、神様の中で一番位の高い一族だ。人間の運命を司る一族。人間の運命の糸を結びつける仕事をしている神様たちだ。

    なるほど、運命の一族の長男ってことは、きっとそれは佐伯家にとってはとてもめでたい事だろうし、ノベーラにとっても良い事なんだろうな。

    でも、参ったな。なんて言えば良いのか、僕にはさっぱり分からなかった。とりあえずうなずいて、空っぽになったマルコさんのぐい飲みに越乃寒梅をついだ。

    それからiPodを持ってきてスピーカーに繋いでキャノンボールの枯葉を流した。とにかく寂しい時には僕は大抵これを聞く。寂しい時に無理矢理明るい曲を僕は絶対に聞かないんだ。心に逆らっても心は癒されないと僕は子供の頃から知っていたから。

    その直後、マルコさんが泣き出した。

    僕の目の前で嗚咽を漏らしはじめて、その後大声をあげて泣き出した。彼は子供のようだった。とても小さくて、とても弱そうに見えた。いつもの彼の威厳や自信みたいなものはどこかにいってしまったように見えた。

    ボノがビックリして起きた。顔を上げて泣きじゃくるマルコさんを心配そうな顔で見ている。ボノの背中にはマルコさんの涙が落ちてどんどん染みていく。

    僕は立ち上がって彼に近づき、彼を抱きしめた。かける言葉を探してみたけど、見つからなかった。僕にはそれしかできなかった。僕が抱きしめたら、彼はもっともっと小さくなってその後もずっとワンワン泣いていた。

    昨夜、僕は泣きじゃくる神様を抱きしめて、外は雨が降っていて、マイルスが枯れ葉のメロディを吹いていたんだ。


    | Mr.Marco | 15:26 | comments(0) | - | pookmark |
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