CALENDAR
S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< April 2018 >>
ARCHIVES
CATEGORIES
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
MOBILE
qrcode
<< 鯖缶にて。 | main | ノラジョーンズの話。 >>
トニーの話。
0


    昨晩、僕は仕事が遅くなって、そのあと鯖缶でギネスを飲んでたんです。それで帰宅がわりと遅くなってしまったんです。

    まあもう今週で鯖缶も閉店なので、僕も出来る限り飲みに行こうと思っています。まあ常連客もみなよく来ているみたいです。思うところは同じなわけですね。皆名残惜しく候。ってことですね。

    鯖缶から帰宅時に家の玄関に近づく間に鞄からキーケースをだして、ふと玄関先の方をみたら、玄関の前に人影があるんですよ。

    うちの前は小さな電灯しかなくて、あまり明るくないし、僕も視力が良いわけではないので、遠くからだとよく見えなかったのだけど、近づいていくとどうやらその人影は玄関の前で座っているようなんです。

    僕は瞬時にあの読書家の幽霊の女の子かと思いました。また座って読書してるのかなって。うーん、さすがにうちにまで来られるのはちょっと困ると思ったりして。

    近くまで行って分かったのだけど、その人影は真っ黒なんです。

    よく見ると顔が大きくて、毛むくじゃらです。顔を俯いて、体育座りのような格好でうちの玄関の前に居る。

    僕が恐る恐る近付くと、その毛むくじゃらの黒い人影はむっくりと顔をあげました。

    『やぁ、おそかったじゃないか。ずっと待ってたんだよ、ひとみちゃん。』

    なんと、それはクマでした。

    クマが日本語を話してる。

    僕は目の前で起こってる出来事が理解できずに、某然とその喋るクマを見つめていました。

    『ああ、そういえば僕はひとみちゃんに会うのは今日が初めてなんだった。でも僕は前から君を知ってるんだよ。マルコさんとノベーラさんからずっと君のことを聞いていたし、何より元々君が僕を作ったんだからさ。』

    クマが言った。僕はもちろんクマの言っていることの意味がさっぱりわからない。

    『まぁ、とりあえずうちに入ろうよ。寒いしさぁ。』

    僕は何がなんだか分からないままクマを家にいれた。

    『うわっ、この家さっ寒いねぇ。早く暖房つけようよ。どうせまた鯖缶行ってたんでしょ。マルコさんからよく聞いてるよ。ひとみちゃんここ数年飲み過ぎだってね。』

    うちに入るなりクマはそう言った。ちょっと失礼なやつだ。クマのくせに。

    僕はキッチンの暖房を入れて、お湯を沸かしてテーブルについてるクマに緑茶を入れて出した。

    『ひとみちゃんさぁ、あのひとみちゃんの今年新しく作った名刺あるでしょ? あの裏に描いたクマね。あれが僕だよ。』

    『ん??』

    『神様があの絵を具現化して命をくれたんだ。ノベーラさんがこないだ運命の神様の所に嫁入りしたでしょ。運命の神様はさぁ、そういうことも出来るんだ。絵や写真や彫刻やそう言ったものに命を与えられちゃうわけ。』

    なるほど。たしかに、それならば納得できる。それにノベーラならばやりそうだ。これは彼女のユーモアなんだろう。

    『僕の名前は、アントニオっていうんだ。ノベーラさんが付けてくれたんだ。旦那には内緒だけど、実は初恋の相手の名前なんだって。周りのみんなからはトニーって呼ばれてるんだ。だからひとみちゃんもまあそう呼んでよ。』

    僕は頷く。なんと、ノベーラの初恋相手の名前なのか、僕の描いたクマなのに著作権は完全に無視されている。まあ、神様には逆らえないけれど。

    トニーはお茶を啜っている。

    トニーは、背の高さは大体1メートル30センチくらいで、小学生低学年くらいの大きさだ。毛の色は家の中でよく見ると濃いブルーグレーのような色をしてる。なかなか綺麗な色だ。目はつぶらでなかなかかわいらしい。

    声は声変わりする前の少年みたいな、高くて澄んだ声をしている。そういわれてみると、確かに僕の名刺の裏に印刷したクマとそっくりだった。

    昨晩はボノは実家に預けていたから良かったなってそのとき僕は思った。もしボノがいたら、こんな同種みたいな毛むくじゃらがいきなり来たら深夜なのに興奮してうるさくて仕方なかっただろうし。それに、近所から苦情も来ただろう。もしこんな喋るクマが近所の人に見られたらそれこそ大変だ。

    『あー、これジャムだねぇ』

    トニーがずっと恨めしそうな目で、戸棚にいれてあった僕が先日作った夏みかんのマーマレードジャムを見つめている。

    僕はジャムをクラッカーに乗せてだしてあげた。

    『美味しいなぁ、これひとみちゃんが作ったんでしょ。なかなかやるねぇ。』

    トニーはジャムクラッカーに夢中で食べている。クマがジャムクラッカーを食べながらお茶を啜る。僕もこの不思議な光景を見ながらお茶を啜る。

    『実は、今日来たのはさぁ、マルコさんからの伝言を伝えに来たんだよね。彼はいま師走の仕事納めで忙しいんだって。だから頼まれたんだ。』

    ジャムクラッカーを食べ終わったトニーは話し始めた。

    『ひとみちゃん時計買ったでしょ。マルコさんから言われたやつね。あれを来年からは出来る限り肌身離さず身に着けなさいって言ってたよ。』

    僕は頷く。今もぼくの左腕にその時計がある。

    『その時計は特別なんだ。他の時計にはない力をマルコさんが込めたからね。ひとみちゃんにとって常にプラスに働くんだって。前になってた時計アレルギーは完全に消えたでしょ?あれはその時計を着ける前のモラトリアムだったんだ。時々人には何かを迎える前にそういう期間が必要になる時があるんだ。ひとみちゃんはその時計と共にこれから写真を撮っていくんだって。 』

    以上!

    そういってトニーはにっこり笑う。彼は笑うととても可愛らしい。

    僕は頷く。

    『たしかに伝えたよ。じゃあ、僕は仕事が終わったから帰るよ。ノベーラさんが待ってるからね。ジャムごちそうさま。』

    トニーはそう言って帰って行ったのです。

    PEACE

    iPhoneから送信
    | Mr.Marco | 10:43 | comments(0) | - | pookmark |
    コメント
    コメントする